いれたりだしたり

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【読了】スチームパンク‐ネオヴィクトリアンアートギャラリー‐

スチームパンクという概念は漠然と知っており、また関心をひかれてもいた。

本でいえばH.G.ウェルズ、ジュールベルヌ、漫画でいえばAKIRAナウシカ、映画でいえばマトリックスなども(べたではあるが)好きなものに含まれる私としては改めてどのようなものか知りたく、この本を読むことにした。

 

基本的にはアートワークを集めた本ではあるが、トータル180ページのうち、序盤の50ページはスチームパンクの概念解説をしており、入門書としてちょうどよかったように思われる。

蒸気機関と真鍮の機械によって彩られた回顧主義的な未来世界、という程度の理解しかなかったが、この本を読むことで一口にスチームパンクといっても多くのジャンルを内包していることがよくわかる。

 

驚きがあった点は二つ、①スチームパンクの多くのモチーフとして衰退しなかったイギリスが用いられていること、②H.G.ウェルズ、ジュールベルヌはいまだに大きな影響を与えていること。

 

①に関して、改めて考えれば産業革命の起こった都市としてのイギリスは非常に象徴的であり、スチームパンクのモチーフとして用いられることは当然だと考えられる。

②に関して、現代日本ですら彼らの影響は大きい。知らない人はいないだろうし、なんならディズニーシーには海底二万里や地底旅行をモチーフにしたアトラクションがある。しかし、その後彼らを超えるような皆が認めるスチームパンクらしい作品がないと仮定すると、あまりにも世界は進歩していないように思える。

「勝手に改造」にそのような議論があった気がする。スキーに例えたとき、巨匠はその世界の新雪を滑り切ってしまい、後発者はシュプールの残った斜面を滑り降りることしかできない、という話だった。仕方ないのかもしれないが、先人の大きさと現代でできることの限界を感じた。

 

アートワークとしては全体的にやはり好みに合っていたが、もっとも心に残ったのはJAMES NG(James Ng Art: Info)という人の作品だった。西欧化した東洋世界ではなく、東洋化する西欧世界というアイディアはとても斬新に思えた。実際の作品も東洋的なモチーフとスチームパンクが融合しており、タッチもやわらかくとても好みだ。

 

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