【読了】科学哲学講義
科学哲学講義、読了。
個人的には「科学は宗教である」というスタンスのもと生きているため、なおのこと科学とは何か知りたいと思い、手に取った。
本のレベルとしては、私のように科学哲学の知識が薄い人でも読みやすい内容だった。おそらくこの本の想定読者層がそのあたりにあるからだとは思うが。
本の構成としては自然法則、因果、観測、検証可能性、合理性といったトピックを各章ごとに扱いながら科学とは何か哲学的な視点から解説するものであった。哲学にありがちなように○○主義というのが頻出しており、すでに何がなんやら覚えていないというのが実情ではある。
この本の非常に良かった点は科学と非科学の線引きがないと明言していることにある。
私を含めておそらく多くの日本人は「進化論は科学的に正しく、神が生命を作ったというのは非科学的である」と考えていると思う。改めてこれらの違いを問われたとき、何人の人が明確に答えられるのだろうか。
よしんばなんらか違いを述べられたとしても、一般人レベル(非哲学者レベル)の回答であれば、おそらくこの本によって論破されてしまうだろう。
これまで身に着けた知識として(耳学問だが)カール・ポパーの検証可能性命題、といったワードはあったので、おおむねこういった議論に収束すると予断を持っていた。
しかし本書の中では議論を一つ一つ積み重ねながら検証可能性命題のように科学とは何かを規定する論の誤謬を示し、結論として科学と非科学の線引きが論理的にはなされないとしている。
良い意味で裏切られる結論であり、科学哲学の入門書としては文句なしかと思う。